総革装の修復


『THE ILIAD OF HOMER. vol.Ⅰ』 、 『THE ILIAD OF HOMER. vol.Ⅱ』 の修復

資料名:THE ILIAD OF HOMER. vol.Ⅰ、THE ILIAD OF HOMER. vol.Ⅱ

翻訳者名 : ALEXANDER POPE  出版社 : Vernor & Hood  出版年 : 1802年

製本仕様 : 綴じつけ、総革装疑似背バンド付き

所蔵 : 個人蔵

 

劣化・破損状態

vol.Ⅰは両平表紙とも本文から完全に外れており、背表紙はゴム糊で背に貼り付けられていた。背表紙には欠損部あり。

vol.Ⅱのおもて表紙は本文から完全に外れていたが、うら表紙は支持体で本文と繋がっていた。背表紙はゴム糊で背に貼り付けられており、欠損部もあった。

2冊とも花布は全欠落していたが、名残の糸が見つかった。

2冊とも表紙には傷やカドの擦り切れが多数あったが、本文にはページの折れ・破れ・欠損などは見当たらなかった。

 

作業内容

vol.Ⅰ、vol.Ⅱともに、ほぼ同じ作業をした。

まず本文背から背表紙を剝がした。その際、vol.Ⅱはゴム糊が強力で、そのままではきれいに剥がれそうもなかったので、雁皮紙の養生張りをしてから剥がした。

本文背の古い背貼りや膠を除去し、切断していた支持体に新規の支持体を繋ぎ、新規の背貼りとともに表紙に固定した。

花布を編み直し、新規の背の芯紙を接着し、その上に新規の疑似背バンドの土台を貼り付けた。

補修用の背革と角革で表装して、剥がしておいた元の背表紙を貼り戻し、保革油を薄く延ばして磨いた。

vol.Ⅱについては、元の背表紙を貼り戻したあとに養生張りを除去した。

 

処置前


処置後


使用材料

雁皮和紙、楮和紙、中性の洋紙、麻ひも、麻糸、絹糸、アクリル絵の具、メチルセルロース、生麩糊、柔のり、中性ボンド、補修用の仔牛革、皮革用の染料、エタノール

 

修復 : 安藤喜久代 Nov.2020