汚されて乱暴に製本された『美しい本』の修復


資料名:Les Fleurs Animées  『花の幻想』全2巻 

著者名:J. J. GRANDVILLE (グランヴィル)

出版社・出版地:Garnier Frères. PARIS

刊行年:1867年(新版)

製本仕様:綴じつけ製本 半革角革装 275×194mm

 

修復前の状態と修復作業

グランヴィルによる手彩色の版画で人気のある本。第1巻の版画が1点欠損しており、第2巻の版画が1点混入していた。
第2巻でも版画が1点欠損していた。第2巻は汚れがひどく、ページの順番をほとんどでたらめに並べて綴じてあった。
どちらにもビニール系の接着剤が使われていて、ページをバラバラにして和紙で修理をしてから元の折丁のかたちと順番に戻して綴じ直した。

ページと版画の修理をしてから綴じ直し、新たに表紙を作って再製本することにした。彩色のない本文ページを水に漬けて汚れを軽減化した。手彩色の版画は水溶性のため、ホコリ除去などのドライ・クリーニングに作業が限定された、汚れの多い部分には薄い和紙を上から貼って少しでも汚れ目立たなくした。
第1巻、第2巻とも汚れとビニール糊による破損部が多く、和紙で修理をして元のかたちに戻して、糸で綴じ合わせた。

再製本は背に山羊革を使い、表紙には製本用の擬革クロスを用いた「くるみ製本」にした。本の開きを良くするために、背の丸み加工だけをしてバッキングは行わなかった。見返しにはマーブル紙を用い、背にタイトルを金箔押しした。
1巻と2巻の表紙には、欠損していた版画のスキャンプリントを貼った。

 

修復前

修復後





 

使用材料:楮和紙各種 でんぷん糊(生麩糊) 膠 綴じ糸(リネン糸) タンニン鞣し山羊革 製本用擬革クロス 本金箔

 

 

修復・記録・金箔押し:岡本幸治